【第29号 文芸やいづ 俳句部門で入選しました】
(五句入選)
初燕
・梅一輪一番咲きのゆるみ初む
・初燕港に鰹絵看板
・砂浜に潮風香る遠花火
・天高しさくさく歩く畦の道
・湯気立ちて海老芋香る雑煮椀
私が暮らしている小さな町の河口野鳥園は、鳥たちの休憩地になっているようでいろいろな鳥がやってくる。我が家の軒下にも10年ほど前まで燕が毎年巣を作っていたが、ある春の昼下がり雛が大きな蛇に狙われてしまった。その年から家の周りで燕の姿を見ることがなくなった。あるとき、燕が人通りの多い店舗の看板下に巣を作っていた。「なぜこんな所に?」と思ったが、ここなら蛇が来ないことを燕は分かっていたのかもしれない。燕が人間を信頼しているようで嬉しい光景だった。
(焼津市教育委員会2019年2月22日発行『文芸やいづ』第29号)
【第28号 文芸やいづ 俳句部門で入選しました】
(五句入選)
青目高
・湯上がりに風鈴の音肌を打つ
・悠々とわずかな時を舞ふ蛍
・大鉢に背中の光る青目高
・昼の庭に凛と佇む立ち葵
・光り差し風と歌うや白き蓮
我が家の小さな庭にメダカの鉢がいくつもある。家族が趣味で何年も前からコツコツ数を増やしていった。だからといって誰にも売るわけではない。卵から孵化させ大きく育てるのが楽しいようだ。今では数えられないほどのメダカたちが鉢の中でくらしている。夏になるとメダカたちはもっと早く泳ぐ。すごいスピードだ。太陽の日差しが強くなると背中がキラリと光る。小さな命が光っているようだ。
(焼津市教育委員会2018年3月13日発行『文芸やいづ』第28号)